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なぜあのサロンには人が集まるのか?「集客学」で読み解く、場所が持つ抗いがたい力

「集客学」とかいう、場所の引力についての話。

最近、「集客学」という言葉を知った。
東京都市大学の川口教授という人が提唱している概念らしいのだけど、これがなかなか面白い。
平たく言えば「なぜ人はその場所に惹きつけられるのか」を科学する学問だ。

ふだん私たちは、なんとなく「あそこはオシャレだから」「有名だから」という理由で場所を選んでいる気がするけれど、実はそこにはもっと根源的な「引力」の正体がある。物理的な距離とか、メニューの安さとか、そういう数値化できるスペックとは別の、もっとふわふわとした、でも抗いがたい何か。
美容サロンを開こうとしている人にとっても、たぶんこの視点は役に立つと思う。


「自由」という名の、一番のサービス。

ドイツに「ラインパーク」という公園がある。
日本の公園だと、芝生に「立ち入り禁止」の看板が立っていたり、あれもダメこれもダメとルールで縛られがちだ。ボール遊びは禁止、大きな声も禁止、夜間は閉鎖。管理する側からすれば、ルールを増やすのが一番楽なんだろうけれど、そうやって縛れば縛るほど、そこから「生きた気配」は消えていく。

でも、このラインパークにはそれがない。広大な芝生の上で、ただ寝転んでもいいし、本を読んでもいいし、何もせずに空を眺めていてもいい。それぞれが勝手なスタイルで過ごしている。

それを見た時、結局、人をもてなすってことは「型にはめる」ことじゃなくて「自由を許容する」ことなんじゃないかと思った。
きっちりとした接客マニュアルや、豪華な内装もいいけれど、お客さんが「ここでは自分のままでいていいんだ」と息をつけるような、心理的な余白。その「ゆるさ」こそが、今の時代、実は一番の贅沢なサービスになるのかもしれない。


専門家は「管理」するためじゃなく「魅力を引き出す」ためにいる。

スウェーデンの公園には「プレーリーダー」という専門家が配置されているらしい。一見、ただ子供と一緒に遊んでいる人のように見えるけれど、実際は専門教育を受けたプロフェッショナルだ。

彼らの仕事は、単に危なくないように見張ることじゃない。安全を確保した上で、遊びがもっと面白くなるように「魅力」を引き出すことだ。出しゃばりすぎず、でも何かあったときにはすぐそこにいる、という絶妙な距離感。

サロンのスタッフも、ただ流行のスタイルを提案したり、高いメニューを勧めたりするだけの人じゃなくて、お客さんの「自分らしさ」が芽吹くのを手伝うプレーリーダーみたいな存在になれたらいいなと思う。
専門知識に基づいた「安心感」を土台にして、お客さんが自分の心地よさを自由に探求できる。そんな風に、専門家が「見守る」ことで生まれる価値こそが、本当のホスピタリティなんだろう。


「できてから」ではなく「できる前」から物語は始まる。

世田谷に「ねこじゃらし公園」という場所がある。
ここは、行政が勝手に図面を引いて作った公園じゃない。計画の段階から周辺の住民が集まって、何度もワークショップを重ねて、みんなで形にしていった公園だ。「自分たちの場所」を自分たちで作るというプロセスそのものが、コミュニティの熱量になっていった。

面白いのは、「できてからが大事」という合言葉。ハードとしての公園が完成して終わり、ではなくて、住民が自分たちで組織を作って、今も管理に関わっている。自分が関わったものへの愛着は、何物にも代えがたい。

店を作る時も同じだ。オープンしてから「さあ集客だ」と慌てて広告を打つより、内装を決める段階からファンを巻き込んでしまった方がいい。「私たちの場所」として認識された時、その店はわざわざ大きな声で宣伝しなくても、地域の中に根を張り、勝手に、でも確実に続いていくものになる。


「農」が教えてくれる、参加型のゆとり。

最近は、公園の中に農地を設ける「農地付公園」なんていうのも検討されているらしい。効率を求める「農業」ではなく、市民が土に触れ、収穫し、体験を楽しむための場所だ。
都会の真ん中で土に触れる。それは単なる風景としての緑ではなく、自分自身が手を動かして参加する「動的な癒やし」の空間だ。人間は結局、ただ眺めるだけじゃなく、その場所に何らかの形で「参加」することで、より深い愛着を感じるようにできている。

サロンも、ただ髪を切ったり肌を整えたりするだけの「受け身の作業場」にしないでほしい。都会の中の「農」がそうであるように、そこを訪れることで、自分の心や体を手入れする楽しさに気づける場所であってほしい。
そんな風に、場所そのものが放つ「参加できる潤い」が、結果として、どんなマーケティングよりも強い引力に繋がっていくのだと思う。

場所を探すことは、生きる覚悟を探すこと。

「場所」には、人の人生を左右するほどの影響力がある。だから、物件探しを単なる事務作業だと思ってほしくない。

あなたがどんなサロンを作りたいのか、どんな風にお客さんをおもてなししたいのか。まだ形になる前の、その混沌とした熱量に、私たちは真剣に向き合いたい。

ここは、単なる「箱」を横流しするサイトじゃない。あなたの「働く場所」であり、誰かを幸せにする「もてなしの舞台」を、一緒に見つけるための場所だ。
まだ何も決まっていなくてもいい。ただ「この場所から何かを始めたい」という思いだけ持って、相談しに来てほしい。

「舞台」を探す|AXiHUB(アクシブ)

参考文献

川口和英 (2018)「都市の集客装置としての公園・緑・農空間」『都市住宅学』101号、pp.33-36